なぜ申請日が12歳の誕生日の前日なのに12歳とみなされるのか?

パスポート申請をする際、収入印紙と都道府県証紙でもって手数料を納めなければなりません。

このうち印紙代ですが、12歳未満だと4,000円であるのに対し、12歳以上になると9,000円となって通常の手数料になります。

パスポート申請においても、子供料金が設定されていると考えれば何ら不思議なことではありませんが、申請日が12歳の誕生日の前日である場合とても不思議なことが起こります。

なぜか誕生日の前日であるにも関わらず12歳とみなされるのです。

今回は、この謎を解明することにしましょう。

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申請日が12歳の誕生日の前日である場合、その子はすでに12歳とみなされるという謎を解くカギは、明治35年に作られた年齢計算ニ関スル法律民法にあります。

年齢計算ニ関スル法律

年齢計算ニ関スル法律を確認してみましょう。

  1. 年齢は出生の日より之を起算す
  2. 民法第143条の規定は年齢の計算に之を準用す


ここで分かるのは、年齢は出生の日から起算するということですから、出生の日つまり誕生日を1日目とカウントするということが分かります。

また、年齢の計算については民法143条を準用するとありますから、次に民法を確認することにしましょう。

民法143条

民法143条第2項では次のように定められています。

  • 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

出生日を1日目とカウントするのでは…?

さて、冒頭に「週、月又は年の初めから期間を起算しないときは…」とありますが、この点に違和感を感じた方はとても鋭いと思います。

なぜなら、先ほどご紹介した年齢計算ニ関スル法律では、出生の日を1日目とすることになっていました。

言い換えると、「初日(出生日)から期間を起算しないときは…」ということになりますので、つじつまが合わないのでは?と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、年齢計算ニ関スル法律では、計算方法については民法を準用するとしています。

つまり、民法に完全に合致していなくても民法を適用するということですので問題ないという結論になるわけです。

満了日は前日

本題に戻ります。

条文には、「その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。」とあります。

これを12歳の誕生日に当てはめると、12歳の誕生日の前日午後12:00(24:00)に満了する(1つ歳をとる)ということになります。

「誕生日前日の午後12:00=誕生日当日の午前0:00ではないのか?」という疑問を感じる方もいらっしゃるかも知れませんが、あくまで法律では前日に満了するとありますので、これは区別して考えなければならないということでしょう。

では、「誕生日前日の午後12:00(24:00)以前の時間帯(例えば23:00)はどうなるのか?」ということになりますが、厳密には1年を満了していないことになりますので、満12歳とは言えないということになります。

しかし、「12歳になる日はいつか?」と問われたら、法律上は紛れもなく誕生日の前日という結論になります。

したがって、パスポート申請においては、申請日が12歳の誕生日の前日を「12歳になる日」と一律にみなし、手数料が変わる日としているということです。

まとめ

いかがでしょうか?

理屈上では、12歳の誕生日の前日より前にパスポートを申請したほうがお得ということになりますが、誕生日前日のような際どい日に申請される方はなかなかいらっしゃらないのではないでしょうか。

しかし、例えば10歳、11歳の子が数年後に海外へ渡航する可能性が高いといった場合は、12歳になる前にパスポートを取得しておく方がよいのかもしれません。

参考にしてみてください。